アピリッツが2023年3月17日に通期の決算を出してから株価が下落しています
業績は良い、配当も増配、来期予想も右肩上がり、と順調に成長しているのに。。
今回はこの部分について考察していく
2023年1月期の決算概要
先ずは2023年1月期の業績をざっと見てみる
売上高
売上高は「73」億円で前期より+52.7%
営業利益
営業利益は「4.6」億円で前期より+98.4%
経常利益
経常利益は「4.4」億円で前期より+102.2%
配当
配当は前期の2倍の「10円」を出しつつ、来期は増配の「12円」予想
2024年1月期の業績予想
業績予想
売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
1株当たり当期純利益 | |
---|---|---|---|---|
第2四半期 (累計) |
4,230 | 204 | 202 | 30.14 |
通期 | 8,734 | 550 | 545 | 81.32 |
配当は増配で「12円」の予想
ポイント
来期の業績予想に関して注意しないといけないのは、2024年1月期の業績予想には「M&A」も「運営移管」も入っていない点
その状態で約20%の業績アップを見ているので、下限でこれだけともとれる
つまり、M&Aや運営移管を成功させることができれば上方修正も入りやすい
アピリッツのM&A実績
ということで、アピリッツがどういうM&Aをやってきたかを見ていく
株式会社Y’s
事業譲受日「2022年6月30日」
「株式会社Y’sの株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ 」
アピリッツが株式上場して2つ目の子会社化
株式会社ムービングクルー
事業譲受日「2021年12月28日」
アピリッツが株式上場して初めての子会社化
運営移管
UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)
配信日「2022年9月16日」
「櫻坂46・日向坂46 応援【公式】音楽アプリ『UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)』サービス移管のお知らせ 」
アルカ・ラスト
配信日「2022年5月11日」
「『アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実』サービス移管のお知らせ 」
けものフレンズ3
配信日「2021年6月10日」
「アピリッツ、株式会社セガの提供するゲーム『けものフレンズ3』の運営に主体として参画」
アピリッツCFOの叫び
その言葉の通り、M&Aは毎年行われているし、運営移管も年1以上のペース
上場前からも一定のペースで事業譲受しているので説得力はある
それでも決算発表後に株価は下がる
2023年1月期の通期決算を発表後に株価は大きく下落
- 増収増益だけど業績予想通りでサプライズなし
- M&Aを織り込んでないから成長鈍化と見られてる
- 増配してるけど配当性向は下がってる
- 四季報予想(取材受けてない)を一部上回ってない
下落の理由はこの辺りとアピリッツ側は分析しているみたい
ただ、決算を発表した後にCFOのセミナーや対談などの動画が出たところで株価の下落もじゃっかん落ち着く
つまり、決算短信や説明資料だけではアピリッツの思いや精神が伝わってない、と取れる
改善点
1. オンラインCFO対話会
例えばAGC株式会社は「オンラインCFO対話会」というものを主催している
- 募集人数:100人
- 形式:Zoomを使ったオンライン形式
- 対象者:200株以上所有している株主
- 応募方法:専用サイトに必要事項を入力
ここで中長期の経営戦略・競争優位性などを説明しながら株主から直接質問もできる、という試み
不特定多数に知ってもらうことも大事だけど、株主により深く理解してもらうことも重要
2. 中期経営計画を出す
オンラインゲーム事業をやっている企業はよくこの文言を使いがちだけど、それは中期経営計画を出さなくていい理由にはならない
例えば「株式会社アカツキ」では「経営方針資料」というものを出していて、その中で
「3D x マルチデバイスx多言語ゲーム」の次世代運営ゲーム群というトレンドを踏まえて2025年までにリリースできる能力を高めつつ、4年で200億円を投資する
と目標を提示している
開発予算やゲームの種類、リリース時期のイメージなどを可視化しているので、ゲーム業界をどう見ていてどこを狙ってどう動いていくのかパッと見分かりやすい
それに加えて「売り切り型」も検証していく、とボラティリティを抑える動きも見せている
こんな感じでちょっと周りを見ただけでも「未来の〇〇を目標に自分達はこういう風に動いているよ!」と教えてくれてる銘柄がたくさんある
さらにWebソリューション事業の方では、経済産業省が「2025年の崖」というものをすでに発表している
なので少なくとも2025年まで市場が活況なのはその通り
こちらはオンラインゲーム事業よりも計画が立てやすいはずなのに、出ていない
つまり「決算短信や説明資料だけではアピリッツの思いや精神が伝わってない」原因の1つはここにある
3. 実績紹介ページの見やすさ改善
アピリッツのウェブサイトには「実績紹介」ページがある
そこではどの企業にどういったサービスを提供したかの紹介一覧を設けているが、パッと見て年代毎に分けられていないのでそこまで利便性は高くない
さらにM&Aや運営移管といった自分たちが成長ドライバーとしている部分の紹介が一切ない
これでは「トラックレコードを見てほしい」という思いとは裏腹に、投資家たちがすぐに確認できる状態を作ってないことになる
アプリ開発・DX化とは別に強調したいM&Aや運営移管などの実績をここで年代毎の表にして見た瞬間わかるように紹介しておけば、決算説明資料を作る際も役立てられるので双方にとって得
自分ならどう訴求するか
2023年1月期の決算短信を発表して、自分ならどういうポイントに絞って説明するか考えてみた
現状の業績予想は下限であること
決まってもいないM&Aや運営移管に言及できないのは当たり前
ただ毎年しっかりと実績を作ってきているので、来期の業績予想は「オーガニック成長の約20%」に「M&Aや運営移管などで得られる分」を上乗せするグラフを作る
当然「M&Aや運営移管などで得られる分」はイメージになるので、現状出せる予想は下限であることを強調
そのために実績紹介ページで年代毎に何をしてきたか見た瞬間わかるようにしておくとより説得しやすくなる
オンラインゲーム事業
- 開発パイプライン x1
- 運営パイプライン x9
- 開発パイプライン x2
- 運営パイプライン x8
開発パイプライン(パートナーゲーム開発)が1つ増えていて、運営パイプラインが1つ減少
という書き方をしていた
自分なら
先ず運営パイプラインが1つ減ったことを言及
そして、その分はパートナーゲーム開発が1つ増えたことで相殺できていると主張
だから、業績予想は「昨年度とほぼ横ばい」
という言い回しにする